(司会)それではお時間となりましたので、ご着席をお願いいたします。 ただいまから、日本弁護士連合会第65回人権擁護大会プレシンポジウム「司法IT化は障害者の司法アクセス保障の契機となるかー障害者の裁判を受ける権利の視点からー」を開始いたします。 本日はお忙しい中、多数の皆様にご参加いただきまして誠にありがとうございます。 私は、本日の司会を務めさせていただきます、高知弁護士会高齢者・障害者権利支援センター「くるみ」運営委員会委員の常田学と申します。 どうぞよろしくお願いいたします。 プログラムを進めさせていただきます前に、いくつかの確認とお願いをさせていただきます。 まず、本日の配付資料をご案内いたします。 お手元の資料をご確認ください。 本日の配付資料は、通し資料1冊。 アンケート質問票チラシ2枚の5点でございます。 資料が足りない方がおられましたら、会場内にネックストラップで、スタッフ証をつけたスタッフがおりますので、お近くのスタッフまでお知らせください。 次に、本日の撮影・報道についてお知らせいたします。 本日のシンポジウムは、当会において記録し、また成果普及に利用するため、会場での写真および動画の撮影を行う予定でございます。 撮影した動画は、後日インターネットにて動画配信する予定です。 また、写真は当会の会員向けの文書の他、ホームページ等にも利用させていただくことがございますのでご了承ください。 また本日の講演会は、報道機関による取材も予定されております。 撮影された映像・画像は、テレビ、新聞等の各種媒体において利用されることがございます。 前方4列目の席まで、または立って移動されますと撮影されることがございますので、ご承知おきください。 撮影されたくない方は、後方の席をご利用ください。 次に、本シンポジウムでは、後半のパネルディスカッションの最後に、質疑応答の時間を設けております。 時間が限られておりますため、お配りした資料の中に入っております質問票を事前に回収させていただき、お時間の許す限りご紹介させていただきます。 基調講演およびパネルディスカッションに対するご質問、ご意見がある方は、15時30分までに質問票をご提出ください。 なお、代筆をご希望される方はスタッフにお声掛けください。 次に、アンケートへのご協力のお願いでございます。 本イベントでは、お時間の都合上、会場の皆様からのご質問やご意見をいただく時間が大変短くなっております。 本イベントについて、皆様からの貴重なご意見をいただければと思いますので、お手数をおかけして申し訳ありませんが、ぜひともアンケートにご回答をいただきますようお願いいたします。 アンケート用紙は、本イベントの終了後に回収いたします。 代筆をご希望される方は、スタッフにお声掛けください。 事前の確認とお願いは、以上でございます。 それでは、シンポジウムの開始に先立ちまして主催者である四国弁護士会連合会理事高知弁護士会会長の紫藤秀久よりご挨拶申し上げます。 (紫藤)こんにちは。 このイベントは、日本弁護士連合会第65 回人権擁護大会のプレシンポジウムとして、四国弁護士会連合会が主催し、日本弁護士連合会が共済して行います。 本日は、障害を持つ方、その支援者の方、障害を持つ方の権利擁護に関心を持つ弁護士の方々にご参加いただいています。 また、障害を持ちながら、弁護士としてご活躍されている先生方から、お話を伺うことになっています。 四国弁護士会連合会の理事として、また地元高知弁護士会会長として、参加者、関係者の皆様に厚く御礼を申し上げます。 タイトルにある人権擁護大会というのは、日本弁護士連合会の年間最大のイベントです。 年に1度、人権擁護に関する様々なテーマを取り上げ、全国持回りで開いています。 今年度の本大会は10 月5 日、6日に長野県で開催されることになっています。 そこで取り上げるテーマの一つが、司法のIT 化に伴う子ども・高齢者・障害者の権利救済、権利擁護に関するものです。 人権擁護大会のテーマに関連して、全国でプレシンポジウムが行われています。 本日のこの催しも、その一環ということになります。 開催に当たっては、高知弁護士会の高齢者・障害者支援センターくるみ運営委員会の委員の皆さんが、半年以上前から、自分の仕事の合間を縫って、準備を続けてくれました。 シンポジウムの中身に関する打合せなどの準備をしながら、今回取り組んだのが「情報保障」です。 具体的には、手話通訳、文字通訳、資料のテキストデータ化やルビあり資料の提供です。 お恥ずかしながら当会でこれまでのイベントでは、情報保障は十分にできているとは言えませんでした。 そして本日が当会としては初めての取り組みということになります。 おそらく日本でも初めての取り組みになろうかと思います。 スタッフ一同、慎重かつ懸命に準備を進めてまいりましたが、経験不足ゆえ、不備や行き届かない点もあるかもしれません。 そこは温かく受け止めていただければ幸いです。 充実した内容になると思いますので、多分あっという間だとは思いますけども、16時まで、皆さんよろしくお願いいたします。 (司会)紫藤会長ありがとうございました。 それでは、基調講演に入らせていただきます。 講師として弁護士の田中伸明さんをお招きいたしました。 田中さんは、視覚障害当事者の弁護士で、日本弁護士連合会、人権擁護委員会、障害者差別禁止法制に関する特別部会、部会員の他、内閣府障害者政策委員会の委員なども務めておられます。 本日は、「裁判手続きにアクセシビリティをー障害者に開かれた裁判手続きを実現するために」をテーマにご講演いただきます。 田中さん、どうぞよろしくお願いいたします。 (田中)ご紹介にあずかりました、弁護士の田中伸明でございます。 本日はよろしくお願い申し上げます。 座ってお話をさせていただきたいと思います。 本日は皆様お忙しい中、ご参加いただきありがとうございます。 本日は、講師を担当させていただきますが、精一杯努めてまいりたいと思いますので、どうかよろしくお願い申し上げます。 ご紹介いただいた通り、私は、視覚障害当事者の弁護士です。 少しだけ自己紹介させていただきますと、実は私は、視覚障害者になったのは、大学を卒業する頃、23歳から24歳になる頃となります。 それまでは、一般学生として、小中高と過ごしまして、大学も、一般学生として入学いたしました。 在学中に視力を悪くしまして、卒業する頃、には、かなり中心視力が弱くなっておりました。 何とか卒業はしましたが、就職という状態ではなくて、中心視力を失った状態で卒業もしたということになります。 したがいまして、非常に自分の将来について悩んだ時期が、それが1年半くらいあったと思います。 そこから、周りの支えもありまして、点字を「あいうえお」から覚えて、卒業は、法学部を卒業したものですから、司法試験にチャレンジしようということで、受験しました。 が、やはり非常に長い時間を必要としまして志してから合格に至るまで15年ほどかかりました。 合格は40歳のときです。 今、私は、61期ですので、15年目の弁護士になりますがそういった自分の経験も踏まえて、何とか障害を持っても希望を持って生きていけるような、そういう障壁がない社会作りに少しでも貢献できればと思いまして、微力ではありますが、努力しております。 私はそういう意味で障害がない人生を半分生きて障害のある人生を、今、半分生きてきているというところですので、そういった両方の感覚を持ち合わせていますので、そのような視点からも少しお話ができればと考えております。 今日は、お話しするテーマが、裁判手続きのIT化に関するお話でございます。 非常に難しいテーマではありますが、私の理解の及ぶ範囲で、できる限りわかりやすくお話したいと思っております。 お手元にレジュメがあるかと思います。 まず第1というところで、差別解消の目指すものというタイトルにさせていただきました。 そこには非常にわかりやすい例を三つほど準備させていただいております。 こんな場合はどう思いますか?ということで、例えば、あなたは視覚障害があるので、入学試験を受けることはできません、と。 こう言われると、どう感じるでしょうか。 あなたは聴覚障害があるから、イベントへの参加はお断りします。 あるいは、車いすを使用しているので、電車の乗車には同伴者が必要です、と。 こういったことは今では起こりませんけれども、一昔前は、こういったことも起こっていたという現実があります。 障害を背負った。 ただそれだけで、断られたり、条件を付けられるということについては、これで良いのだろうかと。 そういう疑問を私自身も、持ったことがあります。 こういった差別の問題というのは、障害者差別ということで、最近よく語られるわけですけれど、これは本当に障害者に、障害者だけの問題ではない。 少し視野を広く見て言いますと、外国人の問題であるとか、性的マイノリティの方々の問題であるとか様々なところで差別というのは起こりうるわけです。 この差別解消が何を目指しているかというと、その差別的な言動を禁止しようと、そういう方向で考えるのではなくて、違いを認め合う社会を作っていこうと、多様性のある社会作りを目指そうと。 そういう前向きなオープンな視点で差別解消というものを捉えていただきたい。 そんなふうに思います。 それこそが、高齢者・障害者、人種、宗教、性別、年齢、そういった違いをそれぞれ認め合って生きていく。 そういう非常に広い価値観、多様性のある社会作りに向かっていけるんだろうと、そのように思います。 そういう目で見たときに、もう一度私達の日本国憲法という、国の基本の憲法を見てみますと、第14条というところで、平等権、平等原則というものが定められております。 少し読み上げさせていただきます。 一般のご参加の皆さんもおられると思いますけれどもなかなか、憲法というものを直接読まれることは少ないかと思いますので、少しお付き合いいただけたらと思います。 第4条ですけれども、「全て国民は、法のもとに平等であって、人種、信条、性別、社会的身分または門地により、失礼しました。 政治的、経済的または社会的関係において、差別されない。 」このように、記載されております。 この憲法の精神というものをやはり社会作りにも具体的に生かしていくという気持ちが気持ちで、この差別解消というものを考えていただきたいと、そのように思います。 それでは第2国際的動向というところに移ってまいりたいと思います。 この差別解消というものは、日本では、障害者差別解消推進法というものが制定されて、昨年改正されました。 非常に大きな話題になっておりますけれども、どこがスタートかということを考えますと、実は「障害者の権利に関する条約」が国連において採択されたというところにそのスタートがあると考えて良いと思います。 障害者権利条約というのは、国連において採択されましたのが2006年12月13日、第61回国連総会において採択されております。 これは、21世紀初の人権条約と評価をされております。 ただ、この条約は、障害者に何か特別の人権であるとか、特別の自由を認めた条約というわけではありません。 むしろ、障害のない人たちが当然に享受していた基本的人権、あるいは自由というものを障害者も等しく享受するんだと、それを確認するための条約であったということができます。 なぜこの2006年に至って、このような条約が採択されたのかといいますと、やはり国際的に見ても障害者の立場というものが非常に脆弱であったと。 やはり、保護の客体として見られて、見られることが非常に多かったというところがあると思います。 この2006年に至って、やはり、障害者も1人の個人として尊重されるべきであると。 人権の主体としての立場をしっかりと確認する必要があるという機運が高まりまして、国際的にもコンセンサスが得られ、そしてこの条約の採択に至ったという流れになります。 この採択された障害者権利条約ですけれども、先ほど申し上げましたように、保護の客体から人権の主体へと大きなパラダイム転換といいますか、考え方が大きく変わったわけです。 これは、そのレジュメにも記載させていただきましたが障害者権利条約の前文の(C)項というところにしっかりと記載がされております。 冒頭に少し文章が続きますが、並びにという言葉の後を見ていただきますと、障害者が全ての人権及び基本的自由を差別なしに完全に享有することを保障することが必要であることを再確認し、と記載されています。 再確認し、というところにも表れていると思いますが、障害者は人権の主体であるとこれまで保護の客体としてしか見られなかったことが、やはり間違っていたということを鮮明に打ち出しているということになります。 それからもう一つ、大きな考え方が変わったのが、障害というものの考え方です。 これは言葉としては少し難しいのですが、医学モデルではなく社会モデル、その考え方が採用されたということになります。 これも、障害者権利条約の前文のこれは、e項に記載があります。 レジュメにも記載いたしましたが、「障害が発展する概念であることを認め、また、障害が、機能障害を有する者と、これらの者に対する態度及び慣行による障壁との間の相互作用であって」という表現があります。 この機能障害とその者に対する態度および環境による障壁との相互作用というところが、非常に重要なところになります。 この点につきましては、少し後で詳しくお話をしたいと思います。 このように採択された障害者権利条約ですけれども、日本はいつこの条約を批准したかと申しますと、2014年1月20日ということになります。 2014年1月20日に批准しまして、日本も締約ことになりました。 締約国となった日本は2016年6月に第1回政府報告を、障害者権利委員会に提出しまして、実はこの報告に基づいた審査というものが、昨年、2022年8月22日と23日の両日にわたって行われました。 その結果、これも昨年になりますが、9月9日、日本に対する総括所見というものが採択されております。 この総括所見というのは、日本審査を経て、障害者権利委員会が日本を見たときに、足りないところ、条約で、条約の内容が、十分実施されているかどうかという観点から見たときに、日本が足りない部分を指摘した、勧告事項と、勧告集という位置づけで、捉えていただいて差し支えないと思います。 権利条約の各条項について、たとえば教育については、こういうことが足りていないと。 労働についてはこういうことが足りていない。 あるいは情報通信関係についてはこういったことが足りていないということが、ずらっと並んだ勧告集になります。 これが昨年の9月9日に発表されました。 締約国の日本としてはやっぱりこの勧告を真摯に受け止め、今後の制度改革に生かしていくということが必要になってこようかと思います。 先ほど、2006年12月13日に条約が採択され、日本の批准が2014年1月20日であるというお話をいたしました。 条約の採択から日本の批准まで、おおむね7年という時間が必要となっております。 この7年間、日本は何をしていたかといいますと、批准に向けた国内法整備ということを行っておりました。 それが数字の3のところになります。 国内法整備ですけども、3本柱ということで、整備が進められていました。 一つ目は、障害者基本法の改正。 二つ目は、障害者総合支援法の制定と。 三つ目が、障害者差別解消法の制定という、3本柱となります。 この3本目の障害者差別解消法の制定が、これは平成25年6月ですので、2013年6月に成立したということを受けて、翌14年の1月に批准をするということに至ったわけです。 そのような経緯が内閣府のホームページにも出ていますので、またお目通しいただけたらと思っております。 この国内法整備におけるポイントということで、この1本目の柱、障害者基本法の改正の内容について、少し皆様にご紹介をしたいと思います。 改正前の障害者基本法の障害者の定義規定です。 これをご紹介したいと思います。 旧障害者基本法の第2条を見てみますと、障害者の定義規定として、このような記載、表現になっておりました。 読み上げさせていただきますと「この法律において、障害者とは、身体障害、知的障害または精神障害(以下「障害」と総称する。)があるため、継続的に日常生活または社会生活に相当な制限を受ける者をいう。」このような記載になっております。 この条文を読むとおわかりいただけるように、継続的に日常生活または社会生活に相当な制限を受ける原因は何かといいますと、これは障害があるためです。 このように読めます。 この旧基本法の定義規定からすると、どういうことかになるかというと、例えば車いすを使っている方が建物に入ろうとする。 その建物の入口までは階段が例えば3段ぐらいあって、車椅子のままでは登れないと。 つまり、車いすユーザーには、建物の入口に入れないという日常生活上の制限が立ちふさがるということになります。 旧基本法の定義規定によると、その原因は何かといいますと、これは、障害があるためであると。 つまりあなたが車椅子に乗っているから入れないんだと、こういう解釈になりがちです。 そうすると、この日常生活の制限を解消するためには何が必要かというと、原因が車椅子に乗っているからということになりますので、これを是正するには例えば、車いすを使っている方が、訓練を受けたり、治療を受けたりして、3段の階段を上がれるようになってくださいと。 あるいは車いすを改良して、階段でも登れる車いすを開発してくださいということになってしまうわけです。 この考え方が医学モデルと言われる。 旧来からの考え方であったわけです。 しかし、先ほど申し上げましたように、障害者権利条約というのは、そのような考え方をとっておりません。 社会モデルといいまして、その制限の原因は、障害だけではない。 社会的な障壁と相まって、出来上がっているものだということですので、条約の考え方と、旧基本法の障害の定義規定の考え方とは相入れないということになります。 社会モデルとはどういうことかというと、確かにその車椅子に乗っている方は、今は建物に入れない。 これは階段が3段あるからです。 だけども、隣にスロープさえあれば何の問題もなく車いすユーザーの方も建物の入口にたどり着くことができる。 つまり、建物の入口にたどり着けないという日常生活上の制限というのは、何も車椅子の人が、車いすに乗っているからということではなくて、そこにスロープが設置されていないという、これは設備の不備にあるということでもあるだろうと。 むしろ、その設備の不備の方が大きい。 こういう考え方が支配的になってまいります。 そういった考え方を障害者権利条約は採択したわけですけれども、それに合う形で、基本法の障害者の定義規定を変更する必要があったわけです。 新しく改正された障害者基本法の条文を見てみますと、 「この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。」 ということで、1を見てみますと、障害者というのは、 身体障害、知的障害、精神障害(発達障害を含む)その他の心身の機能の障害(以下「障害」と総称する。)がある者であって、障害及び社会的障壁により継続的に日常生活または社会生活に相当な制限を受ける状態にある者をいう このように改正をされました。 したがいまして、ここに、障害および社会的障壁によりという文言を変更されたことによって障害者基本法もこの社会モデルの考え方を採用することになりました。 そして社会的障壁とは何かということが、2号に書かれておりまして、 障害がある者にとって日常生活または社会生活を営む上で障壁となるような社会における事物、制度、慣行、観念その他一切のものをいう このようになっております。 このように、基本法の障害者定義規定が改正されたことにより、条約の考え方と国内法の考え方が一致したということになりまして、批准の準備が整ったということになります。 そこで、日本も権利条約を批准し、締約国となったということにそのような流れになってきたということです。 このように、少し大きなところをお話いたしましたが、今回の裁判手続きのIT化する障害者のアクセス保障を考えるに当たっては、この障害者基本法の定義規定にもありますように社会モデルの考え方という視点から考えていく必要があります。 そこで、今、障害のある方々が、裁判を受ける権利を行使する場合に、どのような障壁があるのかを皆さんと一緒に見てまいりたいと思います。 IT化ということですので、そのIT化する際の制度設計にまつわる問題ということで、そこに焦点を絞って考えていきたいと思います。 第3というところをご覧いただきたいと思います。 ここで皆様にご紹介したいのは、実は日弁連で、この裁判手続きはIT化するに際しまして、障害者団体にアンケートを行っております。 これは日弁連のホームページでも公開をされております。 レジュメにも記載をした通りですので、また、興味のある方はぜひそちらを詳しく見ていただきたいと思います。 まず一つ目。 (1)ですけれども用いられる文書形式についてというものを立てさせていただきました。 これは実は裁判手続きのIT化においては、PDFファイルが前提とされていました。 このようなPDFファイルで、文書提出がなされる場合、あるいは、相手からPDFファイルで文書を送られる場合、障害者はどういう障壁に直面するかといったところです。 NPO法人障害者協議会、JDと呼ばれていますが、JDからは、 障害のある人の場合には、 日常的にPDFファイルを利用することが少ない。 したがってわかりやすい説明が必要ではないかという回答をいただいております。 そして、PDFファイルが不適切なものもあります。 音声認識ができるファイルが必要であります。 テキストファイルの併用が必要でしょうという回答がなされています。 実はPDFファイルというのは、音声認識ソフトで、対応できない。 基本的に対応できない。 対応できるのは、テキストデータが、貼り付いたPDFであれば対応できるということになります。 この後、盲ろう者協会の回答や日本視覚障害者団体連合の回答がありますが、同じような内容が記載されています。 実は視覚障害がある人たちが、どうやって文書の内容を把握するのかと言いますと、自分が使っているパソコンにスクリーンリーダーと呼ばれるソフトをインストールします。 それは文書読み上げソフトというものです。 これは例えばテキストファイルとかWordファイルをその音声ソフトを使って、その行ごとに読んでいくカーソルを下げることによって、その行ごとに読み上げていく。 読み上げられた音声を聞いて、音でその文章の内容を認識するというソフトになります。 ところがPDFファイルの場合は、画像データの場合があります。 つまり、写真と同じ状態ですね。 目で見ると文字が書いてあるのですけれども、それが写真である。 画像データとしての文字がPDFファイルに写っているだけで、私達にとってみればそれは景色の写真と同じものなんです。 音声ソフトで認識するためには、その文字がしっかりと文字データとしてPDFファイルに貼り付いていないと音声で読み上げることができないということになります。 従って、盲ろう者協会も日本視覚障害者団体連合も、そういうことがあるので、ぜひ、テキストファイルとかWordファイルをあわせて提供して欲しいと。 こういったニーズが回答として出てきています。 それから二つ目のテーマです。 IDやパスワードによって本人確認が行われる場合についてということです。 IT化される場合には、やはりシステムに入っていく必要がありますので、本人確認がどうしても必要になってきます。 IDやパスワードを取得して、そのシステムに入っていくことになりますが、その点については、全国手をつなぐ育成会、これは知的障害児者の親の会ですが、数字や英字を混ぜたパスワード、あるいは、大文字や小文字を両方使用する。 そういったパスワードなどパスワードの設定に制限がある場合には、その設定自体が難しくなる可能性がある。 こういう回答が出されています。 これはご本人で、知的障害のある方ご本人で設定しようとする場合には、こういう障壁があるのではないかというご意見です。 それから、日本視覚障害者団体連合においては、Web上でIDと、パスワードを設定する場合には、音声ソフト画面をメールソフトではうまく対応がされませんでしたという報告がなされています。 これは、パスワードの設定フォームが、それ自体が画像として写っている場合であるとか、非常に複雑であって、複雑な形式になっていて、音声ソフトでそもそも対応できないといったことがありました。 こういう報告です。 それから最近はWeb上での本人確認に画像認証を使うことがあります。 本当にあなたは、人間ですか?ということで、数字を選んだり、画像を選んだりすることで認証するような方法がとられることがありますが、そういった方法をとられてしまうと、もう視覚障害者は対応できない。 やはり支援者が必要になるということになります。 そういったアンケートの回答です。 それから三つ目のテーマですが情報保障についてです。 これはぜひご紹介したいのですが、全日本ろうあ連盟、これは聴覚障害の皆様からのアンケートの回答です。 文字による通訳や字幕等の他の情報保障手段についての回答です。 全文が欲しい方や、要約筆記が必要な方、それぞれおられます。 全文が必要な方というのは、全ての情報を知りたいという方です。 要約筆記が必要な方というのは、文字情報が多すぎてしまうと、かえってわかりにくくなってしまいますと。 要約された情報の方がわかりやすいという方もおられると。 手話通訳だけでなくて文字通訳も、併用してほしいという方もおられます。 例えば、地名などは、地名などを理解する場合は、手話通訳だけでなくて、文字で見た方が理解が早い。 そういう方もおられます。 重要なことは、聴覚障害があると言っても、様々なニーズがあると。 したがってその人が必要とする意思疎通手段を準備してほしい。 こういった回答があります。 これは、とても深い意味がある回答だなと思っていまして、実は障害というのは、視覚障害にしても、聴覚障害にしても、あるいは難聴にしても、様々なその人によって様々違います。 視覚障害にしても、全盲の方もおられれば、弱視と呼ばれる方もおられます。 真ん中だけが見える、中心だけに視力が残っている方は、ずっと顕微鏡を通して文字を追いかけていくような状態になりますけれど、逆に真ん中は全く見えなくて、周辺部分が少し残っていると。 そういう方もいます。 そういう方の場合は、周辺の視野だけで認識しようとすると、文字はもう読めないですね。 数字に、ここの数字が3と書いてあるのか、7と書いてあるのか、そういったぐらいはまだ認識できますが、画数が多い漢字等は認識できないということになります。 本当に障害種別ごとに様々ですので、やはりどういった配慮が必要かは、その方その方のニーズをよく聞き取って対応するということが、大変必要になってくると、そのように思います。 よく表れている回答だと思います。 それから四つ目のテーマに行きたいと思います。 ウェブ会議についてということです。 これは、そうですね。 ろうあ連盟から回答が来ています。 やはり、映像が乱れたり固まったりすると、これは手話通訳者がいくら手話で通訳をしても手話通訳の画面が固まっていますから、聴覚障害の方は全く固まった状態の時間帯は、無言と同じなんです。 音声が途絶えているのと一緒ということになります。 そういった場合のこれは、通信環境の問題ですから、いつ起こるかわかりません。 そういった起こりうる事態に備えて、前もってそうなったらどういう対応をとるのかということを決めておいてほしい。 そういったニーズが出ています。 それから、日本視覚障害者団体連合の方からは、このウェブ会議については、画面共有についての回答がなされています。 よくオンライン会議で、画面共有をしますということがありますけれど、共有された画面というのは、あれも画像になっていますので、音声ソフトでは対応できないわけです。 そうすると、口頭による説明がどうしても必要になってきます。 その時間をとっていただきたい。 その説明の際に、「この点」とか、「あの点」とか、そういった指示語になると、どの点なのかがわからない視覚情報が全くありませんので、どの点になるのかがわからないものですから、そういった指示語をあまり使わないで欲しい、そういった要望が出ています。 このウェブ会議というのは裁判手続きがIT化された場合に、口頭弁論手続きとか、あるいは、準備手続きなどがオンラインで既に運用が始まっていますが、そういう場合に備えてのアンケートとなっています。 5番目のテーマです。 裁判所への要望についてということで、これは比較的自由に回答をいただいています。 全国「精神病」者集団。 これは、精神障害をお持ちの当事者の団体ですけれど、休憩の申し出があったときにはそれを認めてほしいという要望が出ています。 精神障害をお持ちの方は、集中力が長時間続かないという方もおられます。 なので、休憩の要望があった場合にはぜひ認めてほしいと、そういったニーズが出ています。 それから、少し進んでいきますと、発達障害ネットワークの皆さんからも、要望が出ています。 説明を複雑な文章で行うことを避けてほしい。 「仮定文など」という言葉になっていますが、これは私自身の反省も込めてですけれど、非常に文章を長く話してしまうことがありますね。 「こうこう、こういうお話です」だけれど、もし、「こうこうこういう場合であったら、あなたはどう考えますか」という文章になると非常に長い。 そういった場合は、少し区切って、「こういうお話でしたね」ということで、1回区切るとか、あまり仮定法を使わないように工夫するとか、文章を短くして問いかけるという配慮をしてくださいという要望が出ています。 こういうあたりは、当事者サイドから出てこないと、なかなか私達では、気がつきづらいところかと思います。 こういった要望が出ているということをご紹介させていただきたいと思います。 今、皆さんと一緒に見てきたように、障害当事者が、裁判を受ける権利特に、裁判手続きがIT化されたときには、様々な障壁が、生じることが予想されます。 そこで、第4というところに進んでいきますけれど、障害者の「裁判を受ける権利」を実質的に保障するために、いったい今何が必要かということを考えてみたいと思います。 まず、日本国憲法の32条というところには裁判を受ける権利が保障されております。 裁判を…「何人も、裁判所において裁判を受ける権利を奪われない。」という定めになっています。 そして、冒頭にお話しました、障害者権利条約でもこのことはしっかり確認されております。 条約の13条に、司法手続きの利用の機会ということで定めがあります。 第一項のところを見ていますと、「締約国は、障害者が全ての法的手続き、括弧の中は飛ばします。 において、直接および間接の参加者として、効果的な役割を果たすことを容易にするために、手続き上の配慮及び年齢に適した配慮が提供されることなどにより、障害者が他の者との平等を基礎として、司法手続きを利用する効果的な機会を有することを確保する。」こういう定めになっています。 ここで、注目していただきたい言葉は「手続き上の配慮」という言葉が出てまいりました。 実は、障害者差別解消法等では「合理的配慮」という言葉が使われています。 この「手続き上の配慮」と「合理的配慮」という言葉は実は全く違う概念であるということを、まずしっかり踏まえることが必要になります。 そこで、合理的配慮とはどういう意味かということですけれど、これは条約の第2条に定義規定があります。 「合理的配慮とは、障害者が他の者との平等を基礎として、全ての人権および基本的自由を享有し、または行使することを確保するための必要かつ適当な変更および調整であって、特定の場合において必要とされるものであり、かつ、均衡を失した、または過度の負担を課さないものをいう。」最後の部分が大切です。 合理的配慮というのは、均衡を失したまたは過度の負担を課さないもの。 つまり、過重な負担という概念によって制限を受ける、という特徴を持ちます。 一方で手続き上の配慮とはどういう概念かといいますと、これは「障害者の司法アクセスに関する国際原則とガイドライン」というものが、これも国連において、2020年に採択されて発表されています。 その用語集を見ますと、手続き上の配慮の内容が定められています。 「必要かつ適当な修正および調整」という言葉も入っていますが、最後のところは、「合理的配慮とは異なり、手続き上の配慮は、不均衡または不当な負担という概念によって制限されない」こういうことになっています。 レジュメに記載した者は、機械翻訳をベースにしておりますので、後ろにニュアンスが、確認していただけるように、英語の原文を載せています。 合理的配慮というのは、Reasonable Accommodationという単語が使われていまして手続き上の配慮は、Procedural accommodationという言葉になっていまして、現文上も用語が異なっています。 このように、過度な負担、過重な負担の概念によって制限されないということをよく頭に置いておく必要があると、そのように思います。 そのような条約の定めではありますけれど、日本の法制度、現状の法制度が、この条約に合っているのかどうかということを見てみたいと思います。 これは数字の4のところで、日本の法制度の現状というところで記載をさせていただきましたが、これは、日本政府が障害者権利委員会に対して提出した第1回政府報告の13条の部分をいくつか抜粋したものです。 第86項では、様々書いてありますが、大切なところは、「裁判官の判断で」という文言です。 つまり、現状は裁判長あるいは裁判体の書式によって、手続き上の配慮の内容が決められているというところが、あります。 それから、88項では、民事訴訟法の60条の補佐人の規定というものが、紹介されています。 これは民事訴訟法では60条ですけれど、家事事件手続法調べてみますと、これは27条というところで準用されています。 今回のテーマである家事事件、家事手続きにおけるIT化というところでも、家事事件についても、この条文は関係してくることになります。 それから、90項ですけれど、これは通訳者あるいは、文字で問い文字で回答することができるという民事訴訟法154条の内容が紹介されています。 これも、家事事件手続法を調べてみますと、55条で準用されているということになります。 こういった法制度が条約に適合しているのかどうかということで、昨年の日本審査を踏まえた総括所見を見てみたいと思います。 数字の5番のところです。 ここでは、総括所見の29項と30項を紹介しています。 29項は、懸念事項ということで、三つ定まっていますが、その(b)項を見ていたいきたいと思います。 障害者の効果的な参加を確保するための、民事手続き及び行政手続きにおける手続き上の配慮及び年齢に適した配慮の欠如ということで懸念が示されています。 つまり障害者権利委員会としては、この先ほど見たような日本の法制度では、条約が定める手続き上の配慮としては不十分であると、こういう見方をしているわけです。 30項を見ていただきますと、これは勧告事項ということになります。 (b)を見ていきますと「障害者の全ての司法手続きにおいて、本人の機能障害にかかわらず、手続き上の配慮及び、年齢に適した配慮を保障すること。 」という勧告が出されています。 これにはということで、具体例、どういったところを留意してくださいとしているかというと、配慮に要した訴訟費用の負担、これも勧告事項に入っています。 情報通信機器、字幕、等々、ずらっと並んでおりますが、こういった具体的な内容に留意して今後、国内法制度を整備していってくださいという勧告が出されているわけです。 まだ日本では訴訟法の改正というところまでは全く手が届いておりませんが、訴訟法を少し離れてみますと、手がかりになりそうな法制度はいくつか存在します。 それが数字の6番のところですけど、まずやはり障害者基本法というものがあります。 先ほど定義規定が改正されたと申し上げましたが、その29条のところでは、司法手続きにおける配慮ということで、定めがあります。 ここでは、少し進んでいきますと、「個々の障害者の特性に応じた意思疎通の手段を確保する。 確保するよう配慮するとともに」、こういう言葉があります。 障害者基本法においても特性に応じた意思疎通手段の確保ということが重要視されているという点が、これは手がかりになっていくだろうと思います。 それからもう一つ、これは令和4年に制定されました、俗称でいきますと、情報コミュニケーション法と呼ばれるものです。 基本理念というところ、第3条のところを見ますと、三号などは、非常に重要な理念かと思います。 障害者が取得する情報について、可能な限り、障害者でない者が取得する情報と同一の内容の情報を障害者でない者と同一の時点において取得すること」、同一内容、同一時期ということが重視されています。 四号の方は、読み上げをいたしませんが、デジタル社会に対応するように障害者にも、対応するようにということが理念として掲げられています。 そして第10条では、「必要な法制上または財政上の措置を講じなければならない」という形で定めがありますとともに、13条では、「国および地方公共団体は」という主語で始まって各分野がずらっと列挙されておりますが、最後の方に注目していただきたいと思います。 「司法手続き」という言葉が入っております。 このあたりが、今後の総括所見を受けた国内法の改革に、改革の足がかりになっていくだろうと、このように思います。 そこで最後にまとめということになりますけど、やはり、今申し上げましたように、裁判手続き、IT化も含めてですけれども、障害のある方が裁判を受ける権利、憲法で保障された裁判を受ける権利を障壁なく使うというためには、こういった国際水準で求められているものをしっかりと頭に入れていく必要があると思います。 特に「手続き上の配慮」という言葉は、過重な負担の制限、「過重な負担」という概念によって制限を受けないという特徴を持ちます。 やはりこの点は、大事なところですし、勧告事項にありましたように、訴訟費用の負担も含めて是正するように国際社会としては見ている、障害者権利委員会としては見ているという表現の方が適切だと思いますが、そういった条約体からの意見というものを真摯に受け止めていく必要があるだろうと、そのように思います。 そして、訴訟法上はまだまだ不十分かもしれませんが、基本法であったり、情報コミュニケーション法では手がかりとなる規定も定められておりますので、これらを足がかりにして、ぜひ障害者にとっても、障壁のない、障壁なく裁判を受ける権利を行使できるような制度作りが必要だと考えておりますし、また、そのことが、高齢者であったり、あるいは外国人であったり、そういった方々の裁判を受ける権利もまた、障壁なく、障壁のない制度になっていくのではないかと。 そういったように思います。 これは、今日は裁判を受ける権利、裁判手続きということに焦点を当ててのお話でしたが、ぜひ、多様性ある社会を目指して、皆様とともに少しでも頑張っていけたらと、そのように思います。 私の話は以上とさせていただきます。 ご清聴ありがとうございました。 (司会)田中さん、ありがとうございました。 それではここで10分少々、休憩に入らせていただきます。 再開は14時20分を予定しております。 お手洗い等の移動にあたって必要なことがありましたら、スタッフにお申し出ください。 14:20 再開(司会) それではお時間となりましたので、皆様ご着席ください。 これから後半のパネルディスカッション、「障害当事者弁護士から見た、裁判手続きのIT化と障害者へのアクセス保障」を始めさせていただきます。 本日のパネルディスカッションのコーディネーターは、高知弁護士会高齢者障害者支援センター「くるみ」運営委員会委員長の野亜紀が務めます。 それではここからは、コーディネーターに進行をバトンタッチします。 野さん、よろしくお願いいたします。 (野)それでは、パネルディスカッションを行いたいと思います。 ご紹介いただきました本日のパネルディスカッションのコーディネーターを務めます、高知弁護士会高齢者・障害者支援センター運営委員会委員長の高野と申します。 本日はどうぞよろしくお願いいたします。 本日のパネルディスカッションでは、3名の障害当事者弁護士者をパネルパネリストに迎え、裁判手続きのIT化と障害者アクセス保障について考えていきたいと思います。 ではパネルそのご紹介をいたします。 舞台に向かって一番右、私に一番近い席におられますのが、先ほど基調講演をいただきました 田中伸明さんです。 (田中)田中です。 よろしくお願いいたします。 (野)そのお隣、中央におられますのが、久保陽奈さんです。 聴覚障害当事者で、UDトークなどの音声認識アプリによる文字通訳を利用されています。 そのお隣、舞台に向かって左端が田門浩さんです。 聴覚障害当事者で、手話通訳を利用されています。 (田門)よろしくお願いいたします。 (野)さて今日は、パネリストとして障害をお持ちの弁護士をお招きしているんですけれども、お聞きの皆さんからすると、障害当事者で弁護士という時点でまずあまり想像がつかないのかなと思うんですね。 どうやって仕事をしているかとか、障害があることが弁護士業務にどういう影響があるのかとか、こういったあたりをまずお話いただくことで、裁判手続きに障害というのがどう影響してくるのかというところのイメージを共有してから、今日の議論に入っていけたら良いかなと思います。 ということでまず、自己紹介を兼ねて、パネリストの皆さんから、ご自身の障害特性や、情報保障、普段、弁護士としてどんなふうに業務を行っているのかなどをお話いただきたいと思います。 では田門さんからお願いいたします。 (田門)こちらに出しておりますように、私は田門浩と申します。 聞こえませんので、手話通訳者を介して、私の手話を手話通訳者が音声に変えて通訳をしてもらっています。 東京弁護士会に所属しています。 50期生です。 私は生まれたときから聞こえません。 生まれつき聞こえません。 聴力はゼロです。 全くと言っていいほど聞こえません。 2歳の時に、音に反応しないという私の様子を見て、両親が、おかしいなということで、医師に診せたところ、聞こえないということで、初めて私が聞こえないということがわかりました。 2歳のときです。 2歳から15歳まではろう学校に通いました。 ろう学校といいますと、聞こえない子供たちを集めて教育をする場ですね。 ろう学校の中では、子供同士は手話でコミュニケーションをとります。 私も同じです。 他の子供たちから手話を教えてもらいました。 そして手話を身につけました。 私の場合は、手話が一番合ったコミュニケーションです。 聞こえない人のコミュニケーションといいましても、具体的にお話します。 聞こえない人のコミュニケーションは一人ひとり様々です。 久保さんもおりますように、私とコミュニケーション方法は違いますよね。 また久保さんのコミュニケーション方法は、また後でお話があると思います。 基本的に聞こえない人のコミュニケーションといいますと、三つです。 まず一つ目は手話、二つ目は文字、三つ目は口話という方法があります。 手話に関しますと、細かく言いますと、二つあります。 一つ目は、日本語に沿った、日本語の語順に沿った表現をします。 もう一つは、日本語の語順とは違う表現をします。 例えば、例を出してみます。 例えば「会社の名前が載った大きな自動車が走っている」という文で考えてみましょう。 日本語と同じように、語順で手話を表す場合は、「会社」の「名前が」「乗った」「載っている」「大きい」「車」が「走る」と、日本語と同じように、同じ語順で話します。 もう一つは、「会社の名前が載っている大きな自動車が行く」という手話なんですけども、もう一つの日本語の語順、今のやったのは、日本語の語順と同じもう一つ、日本語の語順とは違う手話表現をやってみます。 ちょっと説明も補足しながら進めたいと思います。 「車」と同時に頭を頷きます。 うなずいて指さしをします、車を。 理由はその車をその後に、修飾語が出てきますので、そういう意味を兼ねています。 うなずいて指差しをして、「会社、名前、をつける」と頭の方に向くわけです。 「会社」のときにまたうなずきます。 「載る」が、車の方につけて頬を膨らませて「載る」と表現をします。 その膨らました頬の意味は、「している」という言葉の意味です。 「載っている」「している」という意味です。 この場合は「乗っている」ということです。 「大きい」それで「車がいく」というふうな単語をします。 「車、指さし、うなずき、会社、名前」口を膨らます「大きい」「車がいく」という感じですかね。 聞こえない人はこちらの方がわかりやすいのかなと思います。 日本語通りの語順で表す表現と、日本語通りではない語順ですね。 形容詞とか、修飾語だとか、名刺の後に着くわけですね。 ですから50が違うということが、日本語の語順とは違うことになります。 または助詞や指さしも使います。 頷き、そういうものを使って表現をしていきます。 単語と同時に。 そういう表現があるわけです。 コミュニケーションについてですけども、いつから聞こえなくなったのかによって、または聴力のレベルもあります。 どれぐらい残存能力があるかとか。 手話を学び始めたのはいつなのか、年齢です。 それによっても様々です。 私が弁護士を目指し始めたきっかけは、12歳です。 以前に、母子家庭で育ちましたので、社会的弱者の支援をしたいという自分の強い思いがありました。 中2の時に、他の聴覚障害を持っている山田裕明弁護士さんがいました。 その人を知りました。 そしてそれをきっかけに、「私も弁護士になりたい」ということで弁護士を目指しました。 高校は、一般の地域の高校に通いました。 聞こえる人たちと一緒に学んだわけです。 その後、東京大学に入りました。 大学在学中から司法試験に挑戦をしました。 その後、卒業の後、千葉の市役所に就職しました。 そこでもずっと司法試験に挑戦をして、8回目でやっと合格いたしました。 1998年から東京弁護士会に登録をしています。 東京新宿区の中の都民総合法律事務所がありますので、そこに所属しています。 その中には弁護士が6人おりまして、全員パートナーです。 共同経営を一緒にしています。 障害を持つ弁護士は私1人です。 事務員3名と手話通訳者1名がその中にいます。 裁判のときは手話通訳者と同行いたします。 それで裁判を行うわけです。 私の手話を通訳者が読み取って日本語にして、裁判の中で話をしてくれます。 裁判官の方や、書記官が話することは、手話通訳が私に手話で伝えてくれます。 裁判が1時間以上を想定される場合は、手話通訳2人と同行します。 依頼の中には、聴覚障害者の方は30%程度です。 障害のない方が残り70%という割合になっています。 聴覚障害のない人は、手話通訳者を介して相談を受けたり進めております。 基本的には手話通訳者がいますので、裁判の進行などには特に大きな問題はありません。 通常に行っております。 手話通訳がいますので、裁判をする場合も裁判長が少しスピードなども配慮してくださることはありがたいです。 一つ困ることがあるんですが、裁判の中で発する言葉が、声が小さい場合があって、手話通訳者がその声は聞き取りにくいということがあるんです。 その場合は、裁判長にお願いをして、大きく話してくださいとお願いをします。 もう一度改めて大きな声で、話をしてもらうということです。 基本的には、困ったことはありません。 ということで、自己紹介を兼ねてお話させていただきました。 ありがとうございました。 (野)ありがとうございました。 では次に久保さんお願いします。 (久保)東京弁護士会の久保陽奈と申します。 本日はどうぞよろしくお願いいたします。 私は田門先生と同じく聴覚障害があります。 両耳とも重度の感音性難聴で、100デシベルを超えています。 どれぐらいの聴力なのかといいますと、簡単に言えば、今は補聴器を両耳につけていますけれども、これをとってしまうと、人の声はもう全く聞こえないレベルです。 補聴器をつけていなくても聞こえる音というのは、例えばジェット機、今日も乗ってきましたが、飛行機の音とか、和太鼓の音ああいった音は聞こえます。 私は元々は聞こえていました。 高校生の頃、自宅にいまして、兄が、鈴虫の鳴き声がすごいと言ったんです。 だけど私にはその鈴虫の音、鳴き声が全く聞こえなかったんです。 なのでそのときに、高音が聞こえにくい難聴であると気がつきました。 ただ、日常生活には特に支障がなく、補聴器をつけなくても、学校で一番後ろの席でも問題なく授業を受けておりました。 ところが、早稲田大学入学後、徐々に難聴が進行していきまして、補聴器をつけることが不可欠になりました。 最初は左耳だけにつけていたんですけれども、右耳にもつけるようになりました。 司法試験を志したきっかけも難聴が関係しています。 当時、半年に一度ぐらい、定期的に通っていた耳鼻科の医師から、「将来は完全に聞こえなくなる可能性がある」と言われてしまったんです。 大学2年生の頃で、当時は軽度から中度ぐらいの難聴で、まだまだ電話もできていましたし、ごく親しい友人の数人にしか難聴であることを伝えていない。 それでも特に支障がなくて、アルバイトもしていました。 ただ、何となく、聴力が徐々に落ちているような、そういう感覚はあったので、そういう不安感というのはありました。 このままどんどんどんどん聴力が落ちていくのかなという不安感はあったのですけれども、医師から言われてしまったことで、「あ、やっぱりそうなんだ」と目の前が真っ暗になるような、そういう気持ちでおりました。 聞こえなくなったらどうやって仕事をしていけばいいんだろうとか、漠然とした不安に押しつぶされそうなそういう時期を過ごしていたんですけれども、その頃だと思いますけれども、NHKのテレビで手話を使いながら仕事をしている、今隣におられます田門先生の存在を知ったんです。 「聞こえなくても弁護士ってできるんだ」と思ったんです。 そのときに将来の仕事として弁護士が選択肢に上がって弁護士を志すことになりました。 世の中の人の役に立ちたいという理由が、直接的なきっかけではなくて褒められたものではないんですけれども、そのようなきっかけで志すことになりました。 大学卒業後から司法試験を受け始め、4回目で合格しました。 司法修習は60期で、丸16年今17年目が今スタートしたところです。 2020年、3年ほど前から隣におられる田中先生や田門先生あと、属しておられる日弁連の障害者差別禁止法制に関する特別部会の委員になりました。 ようやく障害に関係する仕事にも携わらせていただけることになったんですね。 つい最近ということで、ひよっこなんです。 委員会に入ったきっかけとしては、今日のテーマにもなっている民事裁判IT化が関係しています。 今後、民事裁判のIT化が進められるけれども、障害者を置き去りにする制度設計になってはいけないということで、委員会でも活動をしていく必要があるとお聞きしまして、私は、難聴の弁護士として当時既に音声認識アプリ等を、法廷でも使っていたものですから、私の経験が何かお役に立てることがあるかもしれないということで、入らせていただくことになりました。 私は、補聴器をつけていれば、音自体は聞こえているんです。 人の声も聞こえています。 どなたかが話しているという声はわかるんです。 なんですけれども、普段はこうやって音声認識アプリ今日も字幕がありますけれども、文字が不可欠なんです。 それはどうしてなのかと言いますと、感音性難聴私の難聴である感音性難聴は、音がひずんで聞こえるという特徴があります。 子音の聞き分けも難しくなって、例えば、「加藤さん」「佐藤さん」の聞き分けはもうできないです。 口の動きとかその場のシチュエーション、あとはこの場に加藤さんがいるというのであれば、今加藤さんと言ったんだろうなと、そのように推測しながら聞いている感じです。 あと、感音性難聴の特徴としては、たまに正しく聞こえるんです。 たまに、音声で話していて、途中で正しい単語がぱっと聞こえるとか、そういう感じなんですね。 でも全体としてひずんで聞こえてしまうので、正確に聞き取れないという状態です。 したがって、私のような重度の感音性難聴の場合は、弁護士業務に当たっては文字が不可欠になります。 依頼者との面談や法廷活動など、全てにおいて補聴援助システムと音声認識アプリを利用しています。 今日ここに写真がありますけれども、上の写真は、補聴器と、スマートフォン。 あとは補聴援助システムである円形の卓上マイクです。 このマイクは、難聴者向けのものでして、非常に性能がいいです。 クリアな音声を、離れたところにいる人の声を、補聴器につけた受信機に届けてくれるものです。 またこれは、スマートフォンとも繋がるので、このマイクで拾った音を、スマホの音声認識アプリで文字化しています。 なので、聞きつつ、文字も見てやり取りをしているという感じです。 下の写真はこれはペン型の補聴援助システムのマイクになります。 これもここにある円形のマイクと同じ機能のものです。 実際に、これらのマイクを裁判官席に置いてもらったり、あとは代理人席に置いたりして、法廷でも使っています。 これらの機器は、実は実用的になったと言えるのは、この補聴援助システムについては、これの前の世代、FMシステムというシステムがあったのですけれども、それも含めて15年くらいかなと思います。 あと音声認識アプリに関しては、ここ七、八年ぐらいかなと思います。 これらがなかった頃、重度難聴の私がどうやって働いていたかについても少しお話したいと思います。 これらがないということは、基本的に、この補聴器に頼るだけという状態です。 私は進行性の難聴なので、弁護士になりたての17年ぐらい前は今よりも聞こえていたんだけど、補聴器だけでも何とか仕事ができていた時期でもあるんですけれども、法廷で裁判官の言っていることがわからないということがありました。 それで原告の代理人の席から少しずつ歩み寄っていって、最終的にはもう裁判官の目の前で話をするというようなこともやったことがありました。 私は弁護士になって、新人の頃だったので、ものすごく恥ずかしい気持ちもあったし、すごく自分でも戸惑いながら、そういう時期もありました。 あとは、事務所が、他の弁護士を私の専属のサポートとして付けてくれたりもしておりました。 それは、こういったFMシステムなどが出る前です。 やっぱり音声は補聴器だけでは難しいという私の要望を聞いて、そのような専属のサポートの人をつけてくれたんです。 あとは、私が単独で担当するのではなくて、同僚の弁護士をつけてくれたりもしていました。 これらの機器が使えるようになってからも、そのようなサポートをしてくれたりしていました。 あと、単独で担当している案件でも事務局を法廷に連れて行って、補助として筆談をしてもらったりということもしていました。 音声認識アプリについてちょっとご紹介したいと思います。 私は、今日の字幕でも使っているUDトークを、弁護士業務では利用しています。 例えば、皆さんもご存知のGoogle 、Apple、 Microsoftなどの企業が音声認識エンジンを開発しているんですね。 日本の会社でも、UDトークは、アドバンスト・メディアという会社の音声認識エンジンを使っています。 音声認識アプリというのは、この音声には、こういう認識結果を返すという仕組みです。 なので、膨大な音声を収集して開発されています。 なので音声認識アプリやサービスを使う場合には、音声認識エンジンを提供している業者やアプリ開発業者、つまり、サービス提供側に音声を収集、保存、再利用されるかどうかが、注意が必要かと思っています。 私は弁護士で、守秘義務を負っておりますので、例えば、クライアントとの会話の音声や、裁判所とのやり取りなど、そういったものが業者に収集・保存、再利用されないプランを利用するように気をつけています。 今、補聴援助システムや音声認識アプリなどのテクノロジーの進歩によってずいぶんと働きやすくなったと思いますけれども、まだ課題もあります。 例えば、電話については、電話も実は音声認識アプリを利用してやり取りができるようになっているんですけれども、万が一、交渉などで間違いがあると困りますので、電話会議システムを利用して、会議室でそれをスピーカーフォンにして事務局にも同席してもらって必要に応じて補助をしてもらう。 それで私が話すという方法を使っています。 ただ、それで十分に話はできるんですけれども、自宅勤務している場合、コロナでも増えましたけれど、そういうときに電話ができないという不便がまだあります。 あと尋問手続きですね。 法廷での尋問手続きにおいてもUDトークを利用していますが、通常の弁論とは異なって、尋問では事務局2人を法廷に連れて行っています。 これは、自動の認識なので、誤認識があるときは、事務局に修正してもらっているんです。 困るのは、通信の状況が良くないとか認識が遅いとか、証人の話し方が早口というときに、その修正が追いつかないということもあるんですね。 ただ裁判官が、「こういう機械を使うからはっきりと話すようにしてくださいね」と言ってくれる。 あとは認識が来るのを待ってくれるとか、そういう配慮をしてくれる場合もあります。 ちょっと長くなりましたが以上になります。 (野)ありがとうございました。 最後に田中さんお願いいたします。 (田中)引き続きよろしくお願いいたします。 田中です。 私は、弁護士法人名城法律事務所というところに所属しております。 法人全体としては、弁護士が20名程度おりまして、事務局、事務員さんが、35から40名程度はいると思います。 ただ私は、豊田事務所ということで、豊田市に、支店で勤務をしておりまして、そこは、私1人と、事務員さんが2人の3名体制で業務を行っています。 依頼者の方が打ち合わせに来られる場合は、私1人で相談を担当するわけですけれども、資料等をたくさん持ってこられる相談者の方もおられますので、そういった場合は、事務員さんのサポートを受けながら、相談を受けるということをしております。 それから、市役所や法テラスの相談担当の場合は、おおむね事務員の1人を同行しまして、大体、たくさん資料を持ってきてた相談される方ばかりですので、そのように同行して、相談の冒頭で、自分の視覚障害の旨を伝えて、そういう了承をいただいて相談に入るということをしております。 それから、書面の作成ですけれど、これは、先ほども申し上げましたが、音声ソフト、スクリーンリーダーを使って、テキストファイルで、まず作成をいたします。 その後、事務局、事務員さんの方に、その書式修正とか誤字脱字チェックをした後裁判所に提出すると、こういう流れで仕事をしています。 また、相手方から来た書面については、スキャナで全部取り込んで、テキスト化をして、やはり音声ソフト、スクリーンリーダーで聞きながら内容を把握する、こういったイメージで仕事をずっと続けております。 私からは以上です。 (野)ありがとうございます。 ちょっと自己紹介で予定している時間を全て使ってしまいそうでとても焦っているんですが、ディスカッションに入りたいと思います。 パネリストの方々は障害当事者から、弁護士として相談を受けたり依頼を受けることも多いと聞いています。 裁判手続きというのは、弁護士ではない方からすると、障害のあるなしに関わらず難しい複雑なものだと思うんですけれど、障害がある当事者、弁護士ならではの裁判手続きのこういうところが大変だとか、使いにくいというところがあるのか、ということをお聞きしていきたいと思います。 パネリストの皆さんにお話をお聞きする前に、今日は裁判手続きにあまり馴染みがないという方もたくさん参加されておられますので、民事裁判の手続きの流れについて、まずは簡単にご説明したいと思います。 説明と、前のスライドは同じ内容になっています。 民事裁判の手続きはざっくりと、次のような流れになっています。 まず、訴えを起こしたい人が訴状を作成します。 そして、この訴状を裁判所の窓口に提出します。 裁判所で訴状が、受理されると、裁判所が第1回の裁判の日を決めて訴状を相手方に送付します。 そして、相手方は答弁書という、相手方の意見を書いた書面を裁判所と訴えを起こした人に送付します。 そして、第1回の裁判の日が開かれて、当事者双方が出席し、審理が行われます。 裁判での当事者からの主張は、原則として、準備書面という書面に記載して提出します。 証拠もコピーを提出します。 音声や動画は、音声データや動画のデータを提出することもできます。 このような審理が何度か繰り返されます。 手続き中は当事者と裁判官裁判所が電話などで連絡を取り合うということもあります。 事件によってではありますが、本人尋問、証人尋問という手続きが行われることもあります。 最終的には、判決や和解という形で裁判が終わります。 裁判は公開されるのが原則ですので、期日によっては、事件の当事者以外でも、誰でも傍聴することができます。 さて、このような裁判手続きの中で、障害がある人にとって使いにくいところはどこか、というところになります。 裁判手続きの場面を、四つに分けて考えていきたいと思います。 まず一つ目は、裁判所に対して書面を作成して提出するという場面があります。 二つ目は、裁判所や相手方から書面や証拠が届き、この内容を確認するという場面があります。 三つ目は、裁判所の法廷で直接裁判官や相手方とやり取りをするという場面です。 四つ目として、その他の場面についても考えてみたいと思います。 ではまず、一つ目の場面です。 裁判所に対して書面を作成して提出するというところです。 その中でも、訴状の提出というのは、裁判手続きを利用するための初めの一歩。 これができなければ、裁判手続きを利用し始められないというところです。 まず、田中さんにお聞きしたいと思います。 視覚障害のある人にとっては、この訴状を作成して提出するというところで困難を感じる人もおられるかと思うのですが、この点はいかがでしょうか。 (田中)やはり、視覚情報がありませんので、なかなか書式を整える、整えて提出するということには困難があると、そのように思います。 音声ソフトで文章を作っていきますと、同音異義語というものが出てまいりますが、この漢字の変換ミスも、音だけではなかなか100%把握しきれないというところがありますので、誤字も出ることがあります。 したがってどうしても、修正する支援者という存在は必要になってくると思います。 また、点字で訴状を作成して提出したいという方もおられるかもしれません。 名古屋地裁では、過去に一度、点字で訴状を提出して、それが認められたというケースもありますが、おそらく全国的にもこの1件ではないかと思います。 そういう意味では、訴状の内容としたいところを、やはり弁護士を含めた専門家にお願いするとか、自分で書きたい場合は、やはり支援者のサポートを得ながら作っていくということが必要になってくると思います。 (野)ありがとうございます。 田門さん、聴覚障害のある人が訴状や書面を作成して裁判所に提出するという場面で、困難さを感じる点というのはありますでしょうか。 (田門)田門です。 聴覚障害者の中には、ろう学校を卒業した人がいまして、ろう学校を卒業した人の中には日本語の習得がなかなか難しい方がいます。 その理由は何かといいますと、以前のろう学校では日本語を使うことを禁止しておりました。 手話の禁止ですね。 教育は、口話教育です。 口の形を読み取って、内容を把握する。 口の形だけではなかなか内容を読み取ることは難しいです。 子供たちは先生が言っている口を見てもなかなか内容がわかりません。 そのまま卒業するわけです。 結局、日本語の習得がないままに卒業したということです。 文章など、書面を作るとき、また読み方など大変なことが、それ自体が困難な方が多いです。 書面では、特に大変な思いをするんじゃないかと思います。 以上です。 (野)ありがとうございます。 次に、二つ目の点を検討してみたいと思います裁判所や相手方から書面や証拠が届き、内容を確認するという場面です。 ここで気になるのは、やはりまず視覚障害のある方かと思います。 田中さん、視覚障害のある人が郵便物を受け取って、内容を確認して裁判に対応するというのは考えるだけでも何となく大変なんじゃないのかなと思うんですけれど、特に訴状は、ある日いきなり届くわけですので、このあたりはいかがなんでしょうか。 (田中)ご指摘の通りですね。 郵便物は、文字が書いてありますけれど、基本的には点字は入っていないことばかりですので、誰から何が来たかがわからないことがほとんどです。 ですので、訴状が来た場合には、封筒に、点字で「訴状在中」とかそういったものが入っているとわかりますが、現時点ではそういう対応はなかなかないと思います。 それから、代読サービスというものもありますが、裁判所からの文章を第三者に読み上げてもらうということについては、なかなか、プライバシー情報も入っていますので抵抗感を持たれる方もおられると思います。 自分で把握しようとする場合には、来た書面をスキャナーでテキスト化して音声ソフトで読むということが考えられますけれども、そういったシステムをお持ちでない方にとってみると、非常に障壁ばかりと、こういうことになると思います。 (野)なるほど。 確かに、裁判所から届く書類はセンシティブなものですので、なかなかハードルが高いということになりそうですね。 田門さん、いかがでしょうか。 (田門)そうですね。 先ほどお話しましたように、聞こえない人の中には、日本語が、日本語力がちょっと不十分な方もいます。 その場合は、届いても、訴状が届いても、内容が十分把握できない、内容がわからないという場合があります。 すぐ相談できる人がいればそちらに行って、相談もできるんですけど、そのような現状はなかなかないですね。 (野)ありがとうございます。 さて、この二つ目の場面の中でもう一つ気になるのは証拠の確認についてです。 最近はスマホなどで簡単に録音・録画できるようになったので、音声データや動画が証拠として提出されることも多いかと思います。 久保さんこの書面や証拠を見る聞くという点での困難さについてお伺いしたいと思います。 音声データや動画が証拠として出てきた場合、聴覚障害のある人はどう対応されるんでしょうか。 訴状の中では、反訳がついていることが多いですけれど、やはり生の音声の雰囲気などが重要ということもありますし、そもそも自分の依頼者から音声データを渡されるということもあるかと思うんですが、いかがでしょうか。 (久保)依頼者から音声データを提供された場合、私の場合は、聞いても正確に聞き取りができないので、文字起こしをすることが不可欠になります。 音声認識アプリで一旦認識させた上で、事務局が聞きながら修正して文字起こしをしたり、データが長時間の場合は、依頼者の承諾を得て、業者にお願いすることもあります。 文字に現れない口調とか、声色とかから感じられる話、話している人の態度とか音声から感じられる場の雰囲気などについては、事務局に確認することもあります。 (野)ありがとうございます。 裁判手続きに限った話ではないのかもしれないですけれど、やはり支援者がいなくては、音声の雰囲気とかをつかむのは難しいことということですね。 次に、田中さんにお聞きしたいと思います。 裁判手続きというのはとにかく書面が多い手続きですので、視覚障害のある人はとても大変なんじゃないかと思うんですけれども、相手方から出てきた準備書面の確認とか証拠の確認ですね。 視覚障害のある当事者の場合はどうされるんでしょうか。 (田中)これもご指摘の通りで、大変な労力がかかります。 基本的には、テキストデータ化してもらって、スクリーンリーダーで読み上げるという作業を行いますが、図とか表の場合は、これはうまくいきません。 ですので、そういった場合には相手方から出ている証拠説明書などを読んで、できるだけその場所を特定して、私は、事務員の皆さんに読み上げてもらうと。 あるいは、どこに何が書いてあるという内容を伝えてもらうようなことで把握をしています。 ご自身でされる場合には、いずれにしても現状では支援者が必要であると、そのように思います。 (野)ありがとうございます。 では、場面を変えて、三つ目の場面に進みたいと思います。 裁判の期日、つまり裁判の法廷に行くという場面について考えてみたいと思います。 裁判所に実際に行って、法廷で裁判官や相手方とやり取りをするという場面での困難さについてお聞きしたいと思います。 ここは久保さん、お願いできますでしょうか。 (久保)期日に行くとですね、まず出頭カードに自分の名前を書いて、傍聴席や待合室で待ちますが、順番が来たら自分、事務官や書記官は名前を呼ぶので、聞こえない私にはそれがわからないときがあります。 私は東京地方裁判所に係属する事件を扱うことが多いんですが、大規模庁であり初対面の裁判官、書記官が多いので、まず自分が聞こえないことも、期日が始まる前には知っておいていただく必要があります。 私の場合、重度の難聴であることと、先ほどお見せした補聴援助機器UDトークを使うことについて、事件ごとに裁判所に事前に連絡をして、許可を得ています。 したがって、裁判所もあらかじめ把握してくれているので、名前を呼ぶだけではなく、手招きしてもらったりして、声をかけていただいており、この点では特に不自由はありません。 ただし、事前連絡が不可欠です。 裁判官や相手方とやり取りする場合は、尋問以外では、私は音声認識アプリのみで、誤認識があっても修正なしでやっているので、どうしても誤認識が出てきて、内容が把握できないといきもあります。 わからないときや不安なときは「もう一度言っていただいていいですか」といって再度言ってもらったり、自分の認識や理解で正しいかどうか、私の方が内容を反復して確認することもあります。 (野)ありがとうございます。 先ほど久保さんのお話にも出てきましたが、裁判では本人尋問、証人尋問という手続きが行われる事件もあります。 田門さん、手話通訳を利用する当事者にとってのこの尋問手続きの困難さというものはありますでしょうか。 少し短めでお願いできればと思います。 (田門)一般のろう者が、尋問を受ける場合には、そのことについてお話します。 その場合には手話通訳者が必要です。 裁判所で手話通訳を準備してもらうときには、通訳者費用の予納が必要です。 負担が大きくなります。 ですので、一般の聞こえない人の場合は、地域の福祉制度を利用して、手話通訳派遣をしてもらう場合が無料で制度を利用できます。 場合によっては地域の手話通訳者、福祉制度が使えない場合もあります。 その場合は負担が大きくなるわけです。 また、聞こえない人の日本語力が十分でない場合は、手話通訳者を使っても内容が把握できない場合があります。 例えば、被害者から、理不尽な要求を受けた、ですとか、遺族は、生きがいを奪われてしまった。 この場合は、手話通訳の通訳でも十分把握ができない聞こえない人がたくさんいると思います。 また、聞こえない人が手話通訳を見てうなずくことが多いんですが、その場合、他の人が見ると、承認したように誤解、間違った捉え方をするかと思いますが、実は話を聞いているだけ、という意味がうなずきにはあります。 他の人が見ると、承認したふうに誤解をする場合があるようです。 ですから、裁判所も聞こえない人に対する理解を、もっと深める必要があると思います。 以上です。 (野)ありがとうございます。 今のお話はなかなか、障害特性や手話というものをよく理解していないと、誤解の多いところではないかと思います。 ちょっと急ぎ目に、四つ目に進みたいと思います。 その他に、障害のある人から見て裁判手続きの使いにくさ、困難な点などがありましたら、お話しいただけますでしょうか。 では久保さん、お願いします。 (久保)例えば、和解の話し合いする局面において、相手方と裁判所は電話でやり取りすることがあります。 基本的にはFAXでやり取りすることが多いんですけれども、腹の探り合いといいますか、ぽんぽんぽんとリアルタイムにやり取りしながら詰めていくとか、そういったときに私は電話では、事務局同席で行うときがあるので外出時には、できないとか、そういった問題があると思います。 またこれは業務とは関係しない面もありますが、傍聴についてです。 裁判は公開が原則ですから、裁判所は自由に一般の方が傍聴できる状態にしないといけません。 私もですね、関心のある裁判があって傍聴に行きたいと思えば、法廷に行って傍聴席に座ることはできます。 でも聞こえない私は法廷でのやり取りがわからないので、実質的には傍聴ができていないという状況です。 基本的に裁判所内ではスマホで録音したりとかっていうことは認められていませんので、音声認識アプリを使うということも許可が必要といえます。 聞こえるなら自由にいつでも傍聴ができるのに、聞こえない人は、傍聴ができる状態になっていない、そういう社会的障壁の存在を意識することはあります。 (野)ありがとうございました。 今日はパネリストで聴覚障害と視覚障害の当事者にお越しいただいているんですけども、裁判手続きの使いにくさ、困難を語る上では、他の障害特性についても外せないところと思います。 田中さん、先ほどの基調講演の中で、アンケート結果のお話があったかと思うんですけれども、例えば知的障害、精神障害、あるいは四肢障害のような他の障害のある方にとっての困難さというものも、少しだけお話いただくことはできますか。 (田中)知的障害の方の場合には、やはり日常的に意思疎通をサポートしてくれている支援者を同席して、手続きに参加するということが非常に円滑に意思疎通のできる方法だと思いますが、この支援者の同席というところを、どのようにして認めていただくのかというあたりが、ポイントになってこようかと思います。 精神障害の方も同様で、やはり安心して自分の気持ちを安心させて手続きに臨むという場合には、非常に信頼する支援者が隣に座っているだけでも、自分の主張をしっかりと述べることができたりします。 また四肢障害の方になりますと、資料を、記録をめくるような場合には、支援者のサポートが必要になってきますし、やはりどのような障害でも、その人に合った支援者を準備するということが大事なポイントになってくるかと思います。 (野)ありがとうございました。 さて今、3人にお話をお聞きすると、障害がある弁護士が弁護士業務をするにあたっては、様々な支援といいますかツールといいますか、それが必要ということがわかりました。 このような障害特性に合わせた支援は、基本的には費用がかかると思うんですけれども、この費用の負担は誰がどのようにしているのかというところを少しお話しいただければと思います。 まず田門さん、お願いできますでしょうか。 (田門)田門です。 私の場合は、常勤の手話通訳者を1名雇っております。 手話通訳者の給料は、私が負担しております。 いつも同行していて、その費用の負担は大きくなります。 一般の傍聴の場合は、福祉の制度を使うことができますが、私の場合は福祉制度を使うことができないんですね。 ですから、自腹になっております。 以上です。 (野)ありがとうございます。 久保さんはいかがでしょうか。 (久保)私の場合は音声認識アプリを使っていますけれども、弁護士が負っている守秘義務の関係で、音声を開発業者さんに収集、利用されない有料プランを使っていますが、これは事務所に負担をしていただいています。 その他、お見せしたマイクなどのツールは自分で購入して、裁判所でも使っております。 (野)ありがとうございます。 最後に、田中さんはいかがでしょうか。 (田中)スクリーンリーダー等のソフトはやはり自己負担をしておりますし、登録等は、アシスタント私の視覚障害を補ってくれるアシスタントを1人自分の費用で雇用しておりました。 現在は、事務員さんの方で対応してくれていますけれども、業務量によってはやはりもう一度自分の費用でアシスタントを雇用するという必要が出てくるだろうと思ってます。 (野)お三方ともやはり自己負担ということになるんですね。 先ほどの講演にありました手続き上の配慮という考え方からすると、やはりここは検討していくことが必要なのではないでしょうか。 では、少し話題を変えていきたいと思います。 今回、民事裁判手続きのIT化ということで、パネルディスカッションを組みましたので、この部分の話に進んでいきたいと思います。 田中さんの基調講演にもありました通り、現在裁判手続きのIT化が進んでおります。 とはいってもなかなかイメージが湧かないところかなと思いますので、少しだけ説明をさせていただこうと思います。 裁判手続きのIT化というのは、e法廷、e提出、e事件管理の3つのeを目指す手続きとされています。 e法廷というのは、ウェブ会議で裁判所の期日、つまり法廷ですね、を実施するということです。 e提出というのは、現在郵送や持参、ファクスで提出している訴状や準備書面、証拠をオンラインで提出できるようにすることです。 今まで紙で保管されていた、裁判所で紙で保管されていた記録は、電子記録に一本化される予定です。 また手数料も電子納付や電子決済ができるようになります。 e事件管理というのは、事件情報や事件記録をデータベースで管理し、オンラインで閲覧できるようにするというものです。 このような裁判手続きのIT化は、現在進行形で進められています。 そのスケジュールですが、まず、e法廷、これは現在も実施されておりまして、2020年2月からは争点整理手続きという裁判の手続きがWeb会議で開催されるようになっています。 2023年3月からはさらに進んで、一部の裁判の法廷がWebで開催されています。 2024年5月までにはさらに進んで、口頭弁論がこれが皆さんの想定される法廷だと思いますが、これがWebで開催されるようになります。 次に、e提出ですが、これは、2020年2月まではFAXと郵送のみだったものです。 2022年2月からは、民事裁判書類提出、すいません。 民事裁判書類電子提出システム、通称Mintsというシステムが導入されて、準備書面や書証などがオンラインで提出できるようになりました。 これは裁判所で印刷されて紙で保管されます。 ただこのMintsは今度使われなくなり、新たにTreeeSというシステムが導入されます。 2026年5月までにこのTreeeSが導入されて全ての事件記録がオンライン化される予定です。 最後に、e事件管理ですが、これは2020年2月から裁判所内部でmintasというシステムが利用されています。 今後はe提出と統合されて、TreeeSで管理されるようになるという予定です。 以上が、ちょっと駆け足になってしまいましたが、今進められている裁判手続きのIT化の概要の説明になります。 さて、この裁判手続きのIT化では今申し上げたようにいろいろなシステムが使われるようになります。 これに対して、障害のある人への配慮がなされているのかどうかについて、まず見ていきたいと思います。 ここは田中さんがお詳しいところかと思いますので、少し教えていただこうと思います。 まず、e法廷で使われるシステムですが、現在、裁判手続きの一部で使われているのはMicrosoft社のTeamsというグループでの会議、オンラインミーティングですとかチャットができるシステムです。 皆さん、Zoomは使ったことがある方もおられると思いますけれども、あんな感じと思っていただければいいかと思います。 このTeamsは、既にかなり使われておりまして、今まで電話やFAXで行っていたような事実上の連絡や書類送付をチャットを使って行うこともあります。 田中さんこのTeamsの導入にあたっては、障害のある人へのアクセシビリティというものに配慮されていたのでしょうか。 (田中)これはMicrosoft社の既存のシステムを使っておりますので、この導入に際しては特に障害当事者の意見は反映されるということはありませんでした。 既存のアクセシビリティがそのまま使われているという状況になります。 (野)ありがとうございます。 次に、e提出です。 Mintsというシステムが使われています。 Mintsは、さっきも私が、かんでしまいましたが、民事裁判書類電子提出システムの略で、現在裁判手続きの一部で使用されています。 これはファイルをアップロードして提出することができるシステムです。 このMintsのフォームでは、正式な書面として提出できるのは提出できるのは、形式はPDFのみです。 ただ、参考書面として、ワードやエクセルを提出することもできます。 田中さんこのMintsの導入にあたっては、障害のある人のアクセシビリティへの配慮はいかがだったのでしょうか。 (田中)こちらは、導入に際して、日弁連の中の民事裁判手続きのIT化に関するワーキンググループというところが立ち上がっておりまして、こちらを通じて、PDFだけでなくて、できればWordやテキストも一緒に提出をしてほしいといった意見は、提出をいたしました。 (野)ありがとうございます。 このMintsは、あと数年で使われなくなって、今後はe提出とe事件管理の両方の機能を持ったTreeeSというシステムが使われる予定です。 TreeeSは、どのようなシステムにするか、現在検討されている途中、つまり開発中のシステムということになります。 このTreeeSが全面的に利用されるようになると、全ての事件記録がオンライン化されて申立も書面の提出も判決も、最終的には全てオンライン化される予定です。 田中さん、今後重要になってくるのはこのTreeeSかと思いますが、これはさすがに障害のある人へのアクセシビリティは配慮されて作られているということになりますでしょうか。 (田中)こちらは様々に意見を出しております。 まずデジタル庁には、実は、サービスデザインユニットというアクセシビリティを専門に扱っている部署があります。 ぜひ、このTreeeSの導入に際しても、このデジタル庁のサービスデジタルユニットここと連携をしていただいて、アクセシブルなシステムを導入してほしいという意見は申し上げております。 そのような意見も。 日弁連のIT化ワーキングを通じて、最高裁と関係機関に共有をいただいているというところです。 また、日弁連の障害者差別禁止部会、ここには障害当事者弁護士会が多数言いますので、その障害当事者弁護士の意見を取りまとめて、これも同様に最高裁を含めて関係機関に共有をいただいているというところになります。 (野)ありがとうございます。 本当でしたら、先生たちがどんなふうに協議をしているかというあたりも、お話を聞かせていただきたいところなんですけれども、時間の関係で、もし時間が余ればまたお聞きしようと思います。 少し時間が経ってしまいましたので、本題に入りたいと思います。 このように、裁判手続きのIT化が進んでいるということで、障害のある弁護士、つまりパネリストの先生方のお仕事が変わったのでしょうか、あるいは変わらないのでしょうか。 このあたりをお聞きしたいと思います。 まずは田門さんお願いいたします。 (田門)田門です。 ちょっと時間を短くしてお話をいたします。 オンライン裁判が増えてきましたね。 結果、私としては、楽になったというか、いいですね。 なぜかと言いますと、今までは、手話通訳と同行して裁判所に出向いていきました。 でも、オンラインの場合は、私の事務所にいて、通訳者もそこの事務所にいるわけですから、そこで受けられるわけです。 裁判ができるというわけです。 だからすごく楽になったといいますか。 困った面もやはりあります。 もしウェブ会議の場合は、ネット環境が悪い場合は、画面が途中でフリーズしてしまったりするんです。 なかなか裁判が途中でわからなくなってしまうとか。 手話通訳者の場合も、音声を聞いて、手話通訳をするわけですが、ですからその音声がきちっと会話、音声同士が言ったことを通訳するわけですからどうしても遅れるわけですね、通訳が。 ですからWeb会議のときは、同時に進行している場合、私が質問するタイミングが、なかなか言い出しにくい、タイミングが難しいということがあります。 他にも、裁判所ウェブ会議の場合は、Teamsを使っています。 ですが、実際に私の場合は今までZoomを使うことが多かったです。 ですので、他の聞こえない人たちが自分自身でTeamsを使う場合は、うまく操作ややり方がわかるのかなと思います。 Teamsを使う場合と、Teamsを使っている場合はその機能が多いですので、使いこなすのは機能が多いので難しいかなと思います。 (野)ありがとうございます。 久保さんはいかがですか。 (久保)私は事件ごとに、第1回期日までに重度難聴であるということと、UDトークの利用について連絡をして許可を得ていますので、Teamsで会議をする場合にも、パソコンの横にiPhoneを置いてUDトークでやり取りを認識させています。 その意味では、これまで対面でやっていたことがオンラインになっただけと言えます。 ただ、Teamsにはライブキャプションという自動字幕の機能がありまして、それをオンにすると自動で字幕が出てきます。 これが非常に精度が高くて誤認識も少なく、誰がどのような発言をしたかもわかり、見やすさも以前は2行ほどしか表示されなかったのですが、最近は5行ぐらい表示されるようになり、かなり実用的になっていると思います。 事件によっては期日間に裁判官と、Teams上でやり取りすることがあって、今はまだ単なる事務連絡的なものなんですけれども、これまで電話で行っていたことも例えばチャットで行うなどの選択肢が増えることを期待しております。 (野)ありがとうございます。 では最後に田中さん、IT化で変わったところがあるのかお話いただけますか。 (田中)やはり田門先生が指摘されたことと重なりますけれども、裁判所まで、出向かなくても良いという点は視覚障害者の移動上のリスクを回避するという意味でも、かなり気持ちは楽になります。 ただ、Teamsの持っているアクセシビリティが、まだ少し不十分なところがありますので、会議に参加する場面であるとか、あるいは画面共有がなされる場面、チャットが使われる場面等では、私は事務員に読み上げてもらう、そういうサポートが必要になっています。 そのあたりを改善していただけるとさらに、IT化の恩恵を享受できるのではないかと思っています。 (野)ありがとうございます。 ところで、視覚障害あるいは聴覚障害以外の他の障害のある人にとって、裁判手続きのIT化はどういった影響がある、あるいは影響はないということになるのでしょうか。 先ほどお話いただいた知的障害、精神障害という障害、あるいは四肢障害について、どなたかお話いただくことはできますでしょうか。 (田門)田門です。 (野)お願いします。 (田門)IT化につきまして、裁判をする場所、法廷、弁護士を裁判をする場所を自分で選ぶことができます。 ですから、知的障害の方、精神障害の方の場合は、落ち着いた場所を選んで裁判を進めることができるということが利点です。 肢体障害者の場合も同じで、問題は、画面がフリーズしてしまったとき、知的障害、精神障害の方はパニックになるおそれが心配があります。 そのようなときの対策について考えていただきたいと思います。 (野)ありがとうございました。 他にもありますでしょうか?よろしいでしょうか。 それではIT化に関するご自身の体験等につきましては以上とさせていただきまして、最後に今日のディスカッションを踏まえて、障害者にとって真にアクセシブルな裁判手続きにするために、裁判手続きのIT化に関して、今求められていくものは何なのか。 パネリストからそれぞれにご提言をいただきたいと思います。 まず、田門さん、お願いできますでしょうか。 (田門)田門です。 やはり、今まで説明したものをまとめますと、障害者のIT化は遅れている状態だと思いますので、その取り組みが必要だと考えています。 声で話して、手話通訳者がそれを聞いて、聞こえやすい環境をつくるということですね。 将来は、私の希望といたしましては、裁判所で、当事者の費用負担なしに行けるような、手話通訳者を配置できるようなことを考えてくれるといいなと思っています。 以上です。 (野)ありがとうございます。 久保さん。 お願いいたします。 (久保)様々話してきましたテクノロジーの進歩によりアクセシブルな裁判手続きを実現できるという実感はあります。 IT化によりまして、ただこれは、適切な運用が大事です。 例えば、文字が必要な聴覚障害者が参画するときにTeamsの自動字幕を誤認識の修正なしに垂れ流しで使うというのは困ります。 よくわからない言葉ができてきたときに、それが正しい認識であるのか、それとも誤っているのかがわからないまま混乱したまま手続きが進むということも考えられます。 また、障害者が、裁判を受ける権利を真に保障するには、田中先生から熱くご説明いただいた手続き上の配慮について各裁判官や、裁判官の裁量に委ねるのではなくて、制度的な保障が必要であると考えます。 私は、訴訟の当事者ではなくて、代理人弁護士という立場ではありますけれど、私が法廷でいろいろな機械を使うにあたっても、裁判所が積極的に配慮するというのではなくて、「使うならどうぞ。 裁判所は特に関与しませんよ」というような状態です。 稀に、「このような装置が裁判所にあるけど使いますか」と積極的に配慮してくれる裁判官もおられます。 あと、訴訟費用についても、手話通訳は、訴訟費用だから予納が必要であると。 それが大きな負担になっておりますけれども、他方で、文字による支援の一つである要約筆記については、先ほど田中先生からも少し言及がありました民事訴訟法154条1項で耳が聞こえない者または口がきけない者には、文字で問い、または陳述させることができると定めておりまして、これに関して、要約筆記は、訴訟費用ではなくて、公費負担であると。 かつて、その当時の法務大臣が国会で答弁したこともあります。 手話通訳も要約筆記も、いずれも聴覚障害者の意思疎通に関するものであるのに、このような違いがあるというのもおかしいと思っております。 民事訴訟法が定めていることだからと、裁判所も柔軟な対応ができない状態なのだろうと思います。 この点も議論されていくべきだと思っています。 以上です。 (野)ありがとうございます。 では最後に田中さん、お願いいたします。 (田中)やはり、裁判手続きというのは、権利**を守る最後の砦という位置づけにもなります。 したがって障害者も、取り残されないような制度設計が大切になってくると考えています。 講演の中でご紹介しましたヒアリングの結果であるとか、そういうものをしっかり受け止めていただいて、制度設計に生かしていただきたい。 特にIT化される、IT化に際して導入されるシステムについては、ユーザーテストというものを行うことが有効だと思いますので、そういった働きかけをぜひ行っていきたいと思います。 やはり、国際水準で求められているものは、様々な文書でかなり出てきていますので、やはり、日本も国際社会の一員として、そういう国際的な視点と水準も十分に考えながら、今後のIT化を進めていただきたいと、そのように切に望んでおります。 以上です。 (野)ありがとうございました。 大変重要なご示唆をいただけたかと思います。 それではここで一旦ディスカッションを終えて、10分程度参加者の皆様のご意見も聞かせていただきたいと思います。 事前に質問票を回収させていただきましたので、いくつかピックアップさせていただきました。 時間の許す限りにはなりますけれど、パネリストの方々にお答えいただきたいと思います。 では、そうですね。 ただ、いただいている質問はいずれも費用負担についてやはり費用がき気になるということで、費用負担についてのご質問ですので、まとめてご紹介しようと思います費用負担についての質問です。 依頼者の中には、例えば手話通訳者の費用を負担しなければならないのではないかと考える方もいらっしゃると思います。 費用負担についてどのように依頼者に説明していますか。 また、費用負担を申し出る。 依頼者の方に対してはどのように対応されていますかというご質問と、司法手続きに手続き上の配慮をしていると考えられる諸外国の取り組みを知りたい、IT化も含めて費用負担などを、裁判所の裁量ではなく、法制化しているなどの例はありますかというご質問ですが、どなたか、まずご発言いただけますか。 では、田門さんお願いします。 (田門)田門です。 そうですね。 私の場合、聞こえない者にとっての打ち合わせとか相談に来るわけですね。 来たときに、裁判のときも手話通訳費用の負担がありますかと聞かれることがあります。 私は、こうお答えるんですけれど。 もし今の状態で、今の状態が裁判所が手話通訳の準備をする場合、聞こえない人は、自身が費用を負担するようになっています、ということをお伝えします。 もし自分で負担するのができない場合は、自分の住んでいる市町村がありますので、手話通訳派遣という制度があります。 その場合は、派遣として無料で通訳を派遣することができます、ということをお伝えしています。 国際的に、外国の場合は、まず、韓国の場合ですけれど、障害者権利条約批准した後、手話通訳費用については、全額国が負担をする、公的負担をすると決まりました。 またアメリカの場合は、手話通訳の費用だけではなくて、その他の手話通訳だけではなく、言語通訳の負担も全くありません。 という現状です。 以上です。 (野)ありがとうございます。 ずいぶん日本の状況とは違うのかと思うんですけれど、田門さん、費用負担があるから、訴訟は諦めるとか、あるいは、手続きを取るのをやめるという依頼者の方はおられるんですか。 (田門)そうですね。 先ほど自己負担のことについて説明しましたけれど、諦めるということは、少しは諦める人もいます。 ほとんどは、覚悟して裁判をするということです。 (野)ありがとうございます。 他の方はいかがでしょうか。 田中さん、お願いします。 (田中)田中から一言だけコメントをしたいと思います。 今、田門先生の方から少し諦める人もいるというお話でしたけれど、やはりその点が問題になってくると思います。 訴訟費用ということで、手話通訳者の費用が、予納しなければならないと。 敗訴した場合は、そのまま自己負担になるという今の制度が、果たして国連の障害者権利条約が求める手続き上の配慮に合致するのかどうかというところは、もう一度検討していただきたいというところではあります。 というのは、やはり、障害のない人たちは、印紙とかユーキャンとか、郵便切手代等は、負担します。   それ以上の負担はないわけですところが、聴覚障害のある方はそれに加えて、手話通訳費用も予納しなければならないとなると、負担が重いので、萎縮的な効果が生じて、絶対勝てるならやろうとか、負けるリスクが少し高くなってくると、諦めてしまうということもありえます。 ここがやはり総括所見にも出ていました配慮に応じた訴訟費用の負担というものを具体的に明示した上で、手続き上の配慮の欠如があるのではないかという指摘に繋がってくるのではないかと思います。 この点はぜひ、今後も、検討の重要事項として取り上げていただきたいと思っております。 (野)ありがとうございます。 他に質問がないようですので、少し私から、先ほど積み残しになりました、今後導入されるTreeeSの開発について、障害当事者弁護士からも意見を述べているというご説明があったかと思うんですけれど、この部分について、パネリストの皆さんがどういった活動をしているのか、どういったことをお伝えしているのかというところを少しお話しいただけたらと思うんですが、いかがでしょうか。 (田門)田中さんからではないでしょうか? (野)お時間がちょっとありますので、皆さん、できればお話しいただけたらと思います。 (田門)わかりました。 それでは私、田門から。 TreeeSについてですが、多分田中先生が中心になられて進んでいると思うんですが、久保先生も、聴覚障害者の立場から意見をおっしゃっています。 TreeeSについては、理解を間違えないように訴状で全てパソコンで入力をし、データをデータ化して送る方法を考えております。 と思います。 文章のデータ入力が難しい方もいらっしゃいます。 それをスムーズにいくような方法を考えなきゃいけないと思っています。 それぐらいです。 (野)すみません。 私の聞き方がちょっと悪かったかもしれません。 田門先生、刑事裁判手続きについて協議ヒアリングをしたときのお話も少しお伺いしていいですか。 (田門)わかりました。 すみません、失礼しました。 刑事事件裁判ですね。 わかりました。 将来、IT化になってきますと、オンライン化になってきますね。 オンライン化の議論になってきます。 例えば、遠隔地。 尋問をする場合に、インターネットを使って、画面を通して、質問をする尋問をするという形になりますよね。 その場合は、インターネットを使う場合、手話が見にくいことがあります。 手話というのはやはり、立体ですよね。 何といいますか、立体的ですから、立体的に見える必要がありますね、なければなりませんから画面になりますと、画面で見ますと、平面になってしまうんですよね。 ですから、見づらいということもあります。 また、画面の場合は、1秒間30コマについての手話表現というか。 例えば、飛び飛びに表現をする場合があります。 飛び飛びに表現をする、映りにくい場合があります。 そういう見にくい場合もあります。 手話を利用する場合は、画面を通して見るという場合は、聞こえない人にとっては、選択肢の希望としては、リアル、リアル裁判、リアル法廷を希望されるのかなと思います。 選択肢、そちらの選択肢が希望されると思います。 以上です。 (野)ありがとうございます。 田中さん、システム開発にあたって、どういったことを障害当事者弁護士から伝えたり、お願いしたりしているのかというあたりをお話しいただけますか。 (田中)そうですね。 実際に今、今日のテーマは家事手続きですけれど、これは民事裁判手続きの流れから繋がってきていますし、刑事裁判手続きも今、田門先生がお話しくださったようにIT化の検討が進んでいます。 つまり裁判手続き全体として、これも、破産の執行もそうですけれど、IT化の方向に大きく舵が切られています。 そうするとやはり、障害当事者が、取り残されないためには、自分が今、現状のIT環境の中でどういう工夫をしているのかということを、やはり実演して、改正を進めている。 例えば法務省であるとか、最高裁の方にお伝えしていくということが必要になります。 視覚障害の場合は、ヒアリングの際に、法務省のヒアリングの際にも、例えば、スマートフォンであれば、VoiceOverという音声ソフトをこうやって使いますという実演をしてみたり、Teamsであれば、タブ操作を使って今こういうことならできますという実演をしてみたり、あるいは弱視の方であれば拡大文字ソフトをこうやって使っています、これ以上はできませんと。 あるいは久保先生の音声認識アプリはこういうことができますという、この現状をご説明して、その現状をさらに一歩進めることができるのであれば、そういうシステム開発もお願いしたいと思っていますし、また、国際基準では、JIS Xの8 3 4 1−3というのがありまして、それに準拠する形で、ぜひ、アクセシビリティを確保したシステムを導入してほしいということも伝えてあります。 特に、 行政機関では、JIS Xの基準のAAというものを満たすようにと、満たすように努力しようということをメッセージ出されていますので、そういったことも参考にしながら、基本的なアクセシビリティは備えてくださいという働きかけもしていると、そういった活動になります。 (野)ありがとうございました。 私の大変拙いコーディネーター力でちょっと混乱をさせてしまい申し訳ありませんでした。 ではお時間となりましたので、これでパネルディスカッションを終了して、進行を司会に戻したいと思います。 パネリストの方々に拍手をお送りしたいのですが、田門さん、手話で拍手はどう表現しますか。 では、会場の皆様はどちらかお好きな方、普通のといいますか、手で叩く拍手か、手話の拍手か、どちらかお願いしたいと思います。 改めて本日のパネリストの3人の方々に拍手をお願いいたします。 (拍手)(司会)ありがとうございました。 本日は、パネリストの方々それぞれの立場から、障害者の裁判員へのアクセス保障の現状について、本当にわかりやすくお話していただき、今後への示唆をいただくことができたのではないでしょうか。 以上でパネリストの方々にはご降壇いただきます。 皆様、拍手でお送りください。 それではここで、第65回人権擁護大会のアナウンスをさせていただきます。 本シンポジウムは第65回人権擁護大会のプレシンポジウムとして行っております。 人権擁護大会については冒頭の紫藤会長の挨拶でもありましたが、人権擁護に関する様々なテーマを扱っており、日弁連が主催する大会の中でも最大級の大会となっております。 今年は10月5日、6日に長野で行われます。 5日に行われるシンポジウムはどなたでも参加可能です。 Web配信も予定されておりますので、ぜひご参加いただければと存じます。 お手元にチラシを配布しておりますので、詳しくはそちらをご覧ください。 最後に、高知弁護士会副会長 伊野部啓より、閉会のご挨拶を申し上げます。 伊野部副会長、お願いいたします。 (伊野部)ただいまご紹介いただきました、令和5年度高知弁護士会副会長を務めております 伊野部でございます。 本日は、この会場にお集まりの皆様、多数ご参加いただきましてありがとうございました。 また、この素晴らしいプレシンポジウムを、設営に携わっていただきました当委員会、講師の先生方、本当にありがとうございました。 今回のこのプレシンポジウム、いかがでしたでしょうか。 最初の開会の挨拶のときに紫藤会長が、「あっという間に過ぎ去るんではないか」というお話をされていましたけれども、私も非常に同感でして、非常に内容の濃い時間だったのではないかと思います。 2部構成で行われましたが、第1部の田中先生の基調講演では、障害者に関する条約や、国内法の整備の方をまず説明していただきまして、その上で、裁判手続きにおける障害者への配慮等につきましてご説明をいただきました。 田中先生のこの基調講演の中では、医学モデルから社会モデルと、保護の客体から権利の主体である、こういったキーワードが出てきておりましたようにこの障害というものに対しての考え方、意識というものが変わるきっかけになったのではないかと思います。 第2部のパネルディスカッションでは、田中先生に加えまして、田門先生や久保先生の方にもご登壇いただきまして、それぞれの先生方のお仕事の進め方、ご紹介ですとか、苦労話というものを、非常にリアルな内容で聞かせていただきました。 私自身、この高知で暮らしていて、なかなか講師の先生方のような、 講師の先生方のような先生方にお会いすることもなかなかないので、非常に私自身も勉強になったということです。 その中で、今後、民事裁判手続き、ひいては刑事、家事裁判全ての裁判手続きにおいて今IT化が進められていく中で、障害のある方々へどうやって配慮していくのかということについては非常に各先生方のご指摘もありましたように、様々な観点から考えていく必要があるということは実感できたのではないかと思います。 今後このプレシンポジウムが、今後、人権擁護大会もありますけれども、障害のある方にとって、配慮のある裁判手続きになっていくということを、私自身も期待しながら見守っていけたらいいかなと考えておる次第です。 今回のこのプレシンポジウムを通じまして、私自身、感じたことは、障害というものの考え方、ここが一番根底にあると考えております。 これは田中先生がおっしゃっていたことです。 おそらく私も含めて多くの方々が、田中先生のご説明にあった医学モデルというものを、おそらく従来の医学モデルというもので認識をされていた方が多いのではないかと思います。 でもこれが今後、障害を一つ個性と、個性の一つであるという考え方で皆様が意識し、それに基づいて行動していけば、お互いを認識し、認め合うという、共生できる社会の実現というものもまたできていくのではないかと考えておりますし、これが田中先生が最初に説明しておりました、日本国憲法の第14条1項の法の下の平等、これに基づく社会の実現というものに繋がっていくのではないかと考えております。 結びになりますが、今回のこのプレシンポジウムが、今後の障害のある方々へ配慮のある裁判手続きに繋がる、実現に繋がることと、またこの会場におられます皆様のご健勝をご祈念いたしまして、私からの閉会の挨拶とさせていただきます。 本日は本当にどうもありがとうございました。 (司会)伊野部副会長、ありがとうございました。 本日はたくさんの方々にご参加いただきまして、誠にありがとうございました。 以上をもちまして、第65回人権擁護大会プレシンポジウムを終了いたします。 お手元にアンケートを配布しておりますので、ご協力をお願いいたします。 どなた様もお忘れ物のないように、お気をつけてお帰りください。 ありがとうございました。